「風見鶏の館(旧トーマス住宅)」は、北野異人館のシンボル的存在の館。
赤レンガの外壁と屋根の風見鶏が特徴的で、1909年(明治42年)頃にドイツの貿易商G.トーマス氏の邸宅として建築。1978年(昭和53年)には国の重要文化財にも指定されました。
今回は異国の文化と歴史を体験できる「風見鶏の館」の魅力をご紹介します。
赤レンガ張りの色鮮やかな外観
風見鶏の館は、北野・山本エリアに残る異人館の中で、唯一赤レンガ張りの建物。色鮮やかな外観が特徴で、北野異人館街のシンボル的存在にもなっています。
特に三角屋根の上に立つ風見鶏は、北野町の象徴として欠かせない存在です。
風見鶏は、その名前のとおり「風向きを知る役目」もありますが、そのほかにも「魔除け(雄鶏は警戒心が強いことから)」と「キリスト教布教(教勢を発展させる効果)」の3つの役割もあるのだとか。
入館料は大人500円。シティー・ループバスの1日乗車券を提示すると50円引きになります。また、萌黄の館との2館共通券(650円)もあり、それぞれ別々にチケットを購入するよりも200円お得です。
チケット販売所は入口から入ってすぐ右側にあります。
豪華で重厚な作りの1階
風見鶏の館で見学できるのは1階と2階部分。1階は応接間や食堂などがある接待向けで豪華&重厚な作りになっています。
トーマス夫人のサロンとしても使われていた応接間は、贅沢なアンティーク空間。豪華なソファーとアール・ヌーヴォー風デザインのシャンデリアが素敵です。
広々とした居間の天井は幾何学模様。ピンク色のシャンデリアは、天井近くの3つの滑車で上げ下げすることができ、読書やトランプが楽しめるよう明かりを調節していたそう。
居間の横にはソファーを配した記念撮影コーナーも。ハロウィン間近な時期に訪れたので、かわいいカボチャが飾ってありました。豪華なイスに座って、館の主になった気分で撮影してみては?
食堂はドイツの宮廷や城によく見られる城館風造りです。天井小梁・飾り戸棚・暖炉飾りなど、見応えのある豪華さ。
こちらは台所の飾り戸棚。重厚でしっかりした作りをしています。
ワインが置いてあるコーナーは当時氷を入れて、簡易の冷蔵庫としてワインなどを冷やすために使われていたそう。内側にブリキ板を張って冷えやすくする工夫もされていました。
また当時は地下室に台所があり、食堂裏の配膳リフトででき上がった料理を運び上げて、飾り戸棚の右側にある小さな窓(ハッチ)から出されたと言われています。
書斎のサンルーフは、8角形の出窓をイメージして5面分を使うことで、どの角度からも光が入るよう工夫されています。天井とペンダントライトはこうもり傘を広げたデザイン、遊び心をくすぐりますね。
またトーマス氏は貿易商という仕事柄、輸出用の彫刻家具などを取り扱っていたようです。
竜の彫刻のついたイスとテーブルは当時この館で使用されていたもので、長らく中国製とされてきましたが、ヨーロッパで同様の日本製家具が見つかったため、近年ではここにあるものも日本製だと判明しています。
ベランダには当時の写真や年表、そして神戸開港と雑居地北野の歴史の資料を展示。風見鶏の館とトーマス一家にまつわる歴史や当時の様子を、残された写真や年表から詳しく学ぶことができます。
また、風見鶏の館には部屋のいたるところに当時の写真がたくさん飾られています。実際に復元された部屋と見比べながら、当時の生活ぶりを想像するのも楽しいですよ。
2階は当時の生活を感じられる簡素な作り
続いて2階へ。2階は夫婦の寝室や子供部屋などがあり、1階に比べてシンプルで簡素な作りになっています。合理的思想を持つドイツ人ならではの作りです。
こちらは階段横にある窓。昭和30年代頃に住んでいた方が設置されていたようです。写真ではわかりにくいですが、よく見てみるとガラスの部分がクローバー模様になっています。
2階のホールには複製・等身大の風見鶏もありました。鉄でできていて、屋根にある風見鶏と同じサイズ(幅約90cm×高さ約80cm)です。
2階部分は簡素な作りの部屋が多いですが、客用寝室だけはリバティ風の柄に囲まれたラブリーな空間。壁紙もカーテンも花柄でコーディネートされ、おもてなしの心が感じられます。
神戸市が館を買い取って整備した際に、オーストリアの業者に壁紙を張ってもらったそうです。
朝食の間は、宿泊されたお客様とトーマス一家が一緒に朝食をとっていたお部屋。
日当たり良好で暖かく、当時は遠く大阪まで眺められたことから、冬には家族の居間としても使われていたそう。その証拠として、2階にある2つの暖炉(朝食の間・子供部屋)のうち、ここのものが一番使い込まれています。
トーマス氏のひとり娘・エルゼさんの子供部屋。南向きで日当たり良好、なんと24畳もの広さがあります。
当時は洋服ダンス・整理ダンス・テーブルとイス・洗面台・勉強机・縫製台・人形コーナーがあったそうですが、現在はソファーが置かれています。
部屋の奥にはレトロなSINGER製のミシンと、アンティーク風のドレッサーを展示。女の子らしい、かわいい空間ですね。
品数豊富なおみやげショップも併設
2階にはおみやげショップが併設されています。この部屋は当時、トーマス夫婦の寝室として使われていた部屋です。
この部屋には見逃せない見どころが1つあります!なんと当時の壁がそのまま残されているのです。
風見鶏の館は、1978年神戸市が館を買い取るまでは神戸中華同文学校の寄宿舎として使われていました。その際この寝室部分には、中にもう1つ空間を設けて内側に和室を作っていたため、当時の壁が残されているそうです。
トーマス夫婦が使っていた当時の写真も展示されていますので、ぜひ見比べてみてくださいね。
おみやげショップでは、たくさんの商品が並んでいます。こちらは人気ランキング第1位の「キーホルダー」。
亀井堂総本店の「風見鶏の館オリジナル瓦せんべい(12枚入り615円、18枚入り930円)」は、ブラタモリでも紹介された人気商品。
ドイツ製ロイター社のミニチュア漆器は、とても小さくて、まさに職人技の伝統品!お気に入りの1つを見つけてみては?
ほかにも、風見鶏の館限定の振り子時計や、缶バッチ、コースター、タオル&ハンカチ、ブックカバー、ドイツ人形、クッキーなど、素敵なおみやげがたくさん並んでいました。
風見鶏の館は、当時のトーマス一家の生活や思想を感じられる異国情緒たっぷりの空間。
月1回開催している探検ツアーでは、普段は見ることのできない「地下室(使用人が使っていた空間や台所など)」や「屋根裏部屋」まで案内してもらえます。興味がある方はぜひ探検ツアーも参加してみてくださいね。
- 入館料:500円
- 営業時間:9:00~18:00(入館は17:45まで)
- 休館日:2月・6月の第1火曜日(定休日が祝日の場合、翌日休)
- アクセス:シティーループ「北野異人館」バス停から徒歩5分
- Web:https://www.kobe-kazamidori.com/kazamidori/